胸椎・胸郭の回旋の可動域は90°もありません

投げる・打つ動作では捻る動作が使われます。その時に、よく言われるのが背骨を軸にして回転するというものです。

体幹を左右に回旋する動作において、よくある間違いは腰を捻ることです。腰椎(腰)の回旋の可動域はほとんどありません。(5°程度)腰を捻るというのは明らかに間違えています。

体幹の回旋動作の中で大事な役割をするのが胸椎です。しかし、胸椎は腰椎よりも動きますが、それでもその可動域は“30〜35°程度”です。90°向きが変わるほどは動けません。

最近言われるようになったのが胸郭の回旋です。胸郭は、胸椎、肋骨、胸骨で囲まれた、カゴのような形をした骨格の部分を指します。具体的には、背骨(胸椎)、肋骨、そして胸骨によって構成されています。この胸郭は、心臓や肺などの重要な臓器を保護する役割があります。また、呼吸を助ける機能も担っています。

胸郭の構造から考えると、胸郭が90°回旋しているように見えても胸椎の可動域が30〜35°ですから無理があると考えられます。実際、無理に動かそうとして肋骨を痛めたり、脇腹の筋肉を痛めたという話もよく耳にします。

では、なぜ体幹の回旋動作が90°できるのかを考えてみると、胸椎・胸郭ではなく、“肩甲帯”を動かしているからではないかと想像することができます。

肩甲帯は肋骨の上に乗っていますが、くっついているわけではありません。鎖骨・肩甲骨を肋骨の上で左右に滑らせるように動かせば肩を90°入れ替えることが可能です。

肩甲帯で体幹を回旋させるイメージでやってみると肋骨や脇腹の筋肉にストレスを感じることはありません。背面の筋肉が動くことを感じます。動かすことはゆるめることでもありますから、徐々に筋肉の柔軟性も出てきます。背中の下には腰があります。背中の筋肉がゆるんでくれば腰の筋肉もゆるみ、体幹の筋肉がゆるみます。結果、回旋動作が楽にスムーズに行えます。背骨を動かしているわけではないので、目線や頭の位置もブレません。

野球の投手で胸椎・胸郭の回旋で投げようとして、体幹が回旋してしまい、ボールをリリースする前から顔がブレてしまっているケースをよく見かけます。ボールをリリースした後に顔が動くのは構いませんが、リリースの前に顔がブレる投手はコントロールがよくありません。

一方、肩甲帯で回旋運動をすると肩の開きもなく、目線・頭の位置もブレません。無理なく回旋しているので肋骨や腰にも余計なストレスを感じることもありませんし、腕も自然に前に出てきて、スムーズにボールをリリースすることができます。腕を使って投げるわけではないので、肩や肘への負担も少ないのではないかと考えられます。

からだを動かす時は構造から考えて、適切に使うことです。無茶な使い方をすれば痛めたり、故障の原因となります。特に捻る動作は負担も大きいので、無理のない動きでスムーズにできる方法を身につけておくことは大切だと考えます。