今回のテーマは「柔軟性の考え方とその指導」
・筋肉を元の長さに戻すのにストレッチングは適切か
ウォーミングアップ時にストレッチングで長時間筋肉を伸ばすとパフォーマンスが下がる、でも筋肉が硬いままにしておくと痛める危険性があるので伸ばす時間を短くしたり、動的なストレッチに変えるなど筋肉の調整の仕方についていろいろなことが言われます。
ストレッチングが良いか悪いかという以前にそもそも何のために筋肉を調整したいのか?その目的から考える必要がある。
アップの目的は筋肉の収縮の反応を高めること、ダウンの目的は使って縮んでしまった筋肉を元の長さに戻したい。
こういった目的に対してストレッチ、伸ばすことが適切な方法になるのか?
筋肉を伸ばす理由は筋肉が収縮したからですが、その筋肉を伸ばした反応はどうなるのかを考えないといけない。
伸ばし続ける、引っ張り続けると伸張反射が起きてしまい余計に筋肉は緊張してしまう。
そういったことからも伸ばすということは目的に合わないのではないか。
元に戻すという意味では、return、restoreという言葉が適切になるのではないか。
・なぜ筋肉を元の長さに戻さないといけないのか?
筋肉を元の長さに戻さなければいけない理由は中間位を崩してしまうから。
筋肉が硬くなるというのは主導筋と拮抗筋のバランスが崩れてしまっているために元の長さに戻らなくなっている状態。
縮んでしまった筋肉を伸ばそうとしても縮んだ筋肉が伸ばされることに抵抗して伸張反射が起きる。
目的は筋肉の緊張度のバランス50:50に戻すこと。
緊張度が高い方は縮んでいるということになる。
緊張度のバランスを戻すには50:50の状態で関節を動かせばいい、そうすればどちらかが縮むということは考えにくい。
普通に動かしていればどちらかに偏りにくくなるのだからダウン時にケアする必要もない。
アップでも50:50の状態でそのまま動いていけば今までのように準備しなくてもそのまま動きに入れるので時間の節約にもなるし、必要な練習にしっかり時間を割ける。
動きのスピードを段階的に上げていくというようにしていけばいきなり動いてどこかを痛めるといったことも起きないはず。
大事なことは50:50で使うことが実践できるかどうか。
・胸郭の重要性
からだのバランスを良い状態に保つために胸郭の柔軟性は重要。
二本脚で立つと胸郭は1Gによって常に下に落ちようとしているのでバランスが崩れやすい。
中間位で動かないと胸郭の緊張は緩まない。
胸郭を良い状態に保つうえで首や肩甲帯のバランスは大切なので緊張がある場合はきちんと緊張を緩める必要がある。
思ったような結果が見られない原因はテクニックの部分にあった。
首の左右の回旋では動かしている中で頭がふらついてきちんと軸で回転できていなかった。
肩甲骨の上方・下方回旋の動きでは動きをじぶの中で決めてしまっているために肩の前後の緊張のバランスが崩れた状態で動かしてしまっていた。
相手の状態を見極めながら中間位を探りながら丁寧にやるときちんと緊張が緩み、胸郭の柔軟性が改善し、呼吸をしても肺がしっかり動く感覚を感じられた。
胸郭が十分に緩んだかどうかは横隔膜が十分に拡張-収縮しているかがポイント。
ターゲットは斜角筋、大腰筋、こめかみ。
中間位で頭を動かす、股関節を屈曲する、さするといったことで緊張が緩む。
胸郭が十分に柔らかくなると脊柱の回旋が真後ろ以上にできるようになる。
・肘回し、腕回し
肘回し、腕回しで肩に引っかかりが出る原因は肩甲窩で上腕骨頭がきちんと滑っていないから。
滑る動きをイメージしながら動かすと滑りは戻ってくる。
肘を伸ばして動かそうとすると肩に緊張が生まれるので、肘から先は意識しないで中間位で肘を引き上げれば回そうとしなくても自然に回るし肘から先は伸びる。
・首の問題
首の問題は頭部の崩れが考えられる。
頭部の崩れは神経や関節の噛み合わせにも影響する。チェックポイントは顎、耳の形、乳様突起、鼻筋、蝶形骨。
圧をかけたり、関節の噛み合わせや捻じれなどを調整し頭部が整えば首や肩も緩む。
・腸腰筋
脚のバランスが崩れている場合、腸腰筋、背部のバランスが崩れてしまっていることが多い。
仰向けやうつ伏せで中間位で動かすことで腸腰筋の緊張だけでなく背中や腰だけでなく、大腿筋膜張筋の緊張も緩んで脚のバランスも整い立ち方も良くなる。
・インクラインベンチ、パッドの活用
からだを整える動きをする際にインクラインベンチを活用してみる。
仰向け、うつ伏せで肩がリラックスした状態でリストウェイトを付けてぶら下げた状態でいろいろな動きを繰り返すと上肢、体幹の筋肉が緩んで膨らんでくる。
パッドを活用して上体をユラユラさせたり下腿をブラブラさせると下肢の筋肉が緩んで膨らんでくる。
思うような結果が見られなかったケースや肩や股関節、膝などの動きが悪いケースで今回教わったことを生かしたいと思います。