「筋力が低下してくると老後、姿勢が悪くなる」というような話をよく聞きます。
相談に来る人も、「筋力が弱いから姿勢が悪いんです。」というようなことを言われますが、どんな筋肉がどれくらい強ければ、どんな筋トレのエクササイズがどれくらいできれば姿勢が良くなるのかというような明確な根拠は見たことがありません。
だから、姿勢を良くするという条件で検索してみてもいろんなエクササイズが出てくるのです。
骸骨で見ても骨格ラインは重力に対して垂直になっています。
骨は勝手に動きません。
筋肉によって動かされます。
背中が丸くなるというのは腹筋が弱くなるとよく言われますが、腹筋は背中が丸くなる動作で働きます。
実際、猫背になっている人の多くは腹筋が緊張して硬くなっているケースが多いです。
姿勢の崩れは筋肉の緊張度のバランスが崩れで起こります。
いくら筋トレをしても姿勢が戻らないのは緊張度のバランスが取れていないからです。
バランスは筋力が強いから取れるわけでもありませんし、弱かったとしても取ることができます。
筋力が弱いのであれば弱いところで体幹の緊張度のバランスを取ればいいだけの話ではないでしょうか。
年配の姿勢の崩れを気にするクライアントさんにも全身の筋肉の緊張をゆるめて緊張度のバランスを取ってみると姿勢の崩れを直すことができます。
ゆるめるだけだと直後は良くてもすぐに元に戻ってしまうのではないかと思う人も多いですが、持続効果は数日続きます。
トレーニングを継続していれば徐々に持続時間が長くなります。
なぜなら、その姿勢は矯正したものではなく、“元々の状態に戻した”からです。
矯正は強制です。
違和感があればどんなに悪いと言われる姿勢でも楽な方に戻るのが自然です。
ところが筋肉の緊張をゆるめて戻した姿勢は崩れた姿勢でいるよりもその姿勢でいる方が楽だと脳が感じます。
楽なものをわざわざ崩す必要はありませんから、すぐに崩れるようなことはないのです。
崩れるとすれば頑張って何かをやったり、筋肉を緊張させるようなことをした時です。
姿勢を直す、維持するのにそんなに大きな筋肉、筋力はいらないということです。
筋トレ好きな人がそんなことを言うから困ったものです。