テレビやネットでは青学大の強さの秘訣といったということで体感トレーニングだけでなく走り方についての情報もいろいろ出てきます。
その中で“腹筋で走る”というものがあるようです。
そういう情報を目にしたクライアントさんから「腹筋で走るというのはどういうことか?」と尋ねられます。
腹筋で走ると言うと変わった走り方のように思えますが、スムーズな走り方をすれば腹筋は自然に使われます。歩いても腹筋は使われます。
脚がどこから始まっているのかということを考えてみれば腹筋を使って走るということは誰でも簡単にできます。
背骨と脚を繋いでいる腸腰筋というのがありますが、それはだいたいみぞおちの辺りから太ももの骨にかけて付いています。
そこから脚が左右にぶら下がっているというイメージで体を前に進めていくだけで歩いたり走っている最中にお腹に手を当てると腹筋が動いているのがわかります。
よく見られる脚を一生懸命動かして歩いたり走ったりすると太ももの筋肉を使って脚を前に持ってくるので腹筋を使うという感覚がわからないし、太ももの前ばかりが辛くなります。
また、腸腰筋というと、速く走れる選手は腸腰筋が太いので腿上げなんかで腸腰筋を鍛えようとしますが、腿上げをいくらしても腿を上げる力が多少上がっても速く走れるなんてことはありません。
そもそも速く走れるのは腸腰筋が太いからではなく、速く走れる選手は腸腰筋を上手く使って走っているからです。
普通の人は筋肉を縮めることで太ももの骨を前に持ってこようとしますが、意識して行う動作は筋肉が縮むスピードは遅くなるので素早い動作にはなりません。
腸腰筋が最も使われるのは足が地面から離れる瞬間だと言われています。
マラソンにしても短距離にしてもトップレベルの選手は股関節をしっかり伸ばす動きが見られます。
そうすると腸腰筋は伸ばされ、筋肉が急激に伸ばされると切れないように縮もうとする反応(伸張反射)が起こります。
反射は意識して行う動作よりも筋肉が縮むスピードが速いので脚が素早く前に出てきます。そしてそういう脚の使い方をすると脚は回転するような動きになります。
この伸ばされるストレスは縮める時よりも大きなストレスが筋肉にかかります。
さらに速く脚が回転すればそのスピードの分だけさらにストレスが大きくなります。
その結果、腸腰筋が太くなるのです。
自然にやれば使えるはずの筋肉が使えないということは走り方の問題です。
いくら体幹を鍛えても走る時に使えるかどうかは別問題ですし、意識してやった動作というのは不自然な動きでしかありません。
それもまた使えるはずの筋肉が使えない原因にもなります。
ほとんどのことはわざわざ意識してやらなくても、楽にスムーズに自然な動きでやればそうなる動きばかりです。