なぜボルト選手は速く走れるのか

先日ボルト選手のスプリントフォームについて解説している番組が放送されていました。
その動きを見ると参考になるものがたくさんありました。

一般のランナーの中には踵から接地して足首を使ってつま先で地面を引っ掻くように蹴って走っている人が多いですがボルト選手はそのような脚の使い方はしていません。

ボルト選手はつま先から接地し足の指で地面を後方に押して股関節を伸ばす動きで使っています。
脚は回転運動ですし、あれだけ速く脚が回転していれば接地は足裏全体というわけにはいかないので一部だけが接地するようになってしまいますが、一般的に言われるような踵からの接地はしていません。

ボルト選手のふくらはぎはあれだけ大きなお尻や太ももの裏(ハムストリングス)をしているのに細くなっています。
股関節を主に使い、足首はほとんど使っていないということです。
お尻からの出力を足首へと伝えて母趾、母趾球で地面を後方に押して推進力を生んでいるということでしょう。

脚の運びも一般的には腿をしっかり上げたり脚を前に大きく出して走ろうとする方も多いですが、トップレベルのスプリンターは脚を高く上げたり、素早く前に持っていくような動きは見られません。
100mも持久力が必要です。
意識的に筋肉を使うと筋肉を動かすエネルギーがすぐになくなってしまって脚が動かなくなってしまいます。
後半になるとピッチが遅くなったり、ストライドが出なくなるというケースは意識的に脚を動かそうという意識が原因です。
意識は筋肉を緊張させ、動作にブレーキをかけてしまいます。
脚を意識して走るとピッチも落ちてしまいます。

一生懸命やらなくても地面を後方に押す、股関節を伸ばすように脚を運ぶことで腸腰筋の伸張反射が起こり、膝は自然に前方へ戻ります。
速く走れる選手は腸腰筋が太いと言われていますが、この筋肉は足が地面から離れる瞬間の最も働きます。
だから腸腰筋が発達しています。

また股関節を伸ばす動きは腸腰筋を伸ばす動きになります。
筋肉は伸ばされると反射的に縮もうとします。
そうすれば自然と脚は前に戻ってきますし、意識的ではなく反射的に行う動作なので脚の回転運動も速くなりピッチも上がります。
なのでボルト選手の走りを見ると体の前よりも後ろで踵がお尻を叩くくらい大きく巻き上げる動きが見られました。

そのような脚の使い方をするボルトのストライドは2mを余裕で超える広さでした。(脊柱側湾症があるので左右のストライドに20cm違うようです)

腕振りは一般的には「肩甲骨から動かすように」、「肘を引くように」と言われますがボルト選手の腕振りは真逆です。
顔の前に来るくらい、前に大きく振っています。
スプリントでは腕振りは推進力を生むためのとても重要なものです。

腕を前に振ることで同側の脚は後方へ押すようになります。
脚を意識的に使うと筋肉のスタミナが早く切れてしまって大きく減速してしまいますが腕を前に振ることで脚はリラックスしていてもしっかり地面を押して推進力を得ることができます。
ストライドを伸ばすにも腕振りのリズムは重要です。

(ネットから参照)

スプリントにしてもマラソンにしてもランニングのスピードはピッチ×ストライドで決まります。
そのどちらかを高めれば今よりスピードは上がります。

世界のトップ選手と比べれば筋肉の質など違いがたくさんありますが、こういった速く走るための走り方、体の使い方は参考にするべきだと思います。